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2005年07月16日
-本[小説]-よろずや平四郎活人剣
昨年末から藤沢周平の時代小説を愛読するようになった私ですが、ついこの間も「よろずや平四郎活人剣」という面白い小説に出会いました。
藤沢先生お得意の複数の短編の連作小説です。前に読んだ「用心棒日月抄」と雰囲気はそっくりだと思いますね。小説の舞台が、水野忠邦の改革を背景にした市井小説、という辺りも、非常に藤沢先生らしさが活かされている感じです。
さて、このお話の最大の面白みは、「剣」の腕に自信のある主人公が、「よろずもめごと仲裁つかまつり候」という奇妙な看板を掲げて、「口」先でいろいろなエピソードを解決していくところにあります。まぁ、そのエピソードしだいでは、剣を使う場面もしばしば出てきますが、全体的に「殺伐」という雰囲気はほとんどなくて、人探しや喧嘩の仲裁といった仕事の合間に、庶民の生活の悲喜こもごもが見え隠れする辺りにホロリとしたりニヤリとしたりで、その辺の描写の巧さはさすがなのです。
「用心棒日月抄」では、複数の短編の背後に、赤穂浪士討ち入りという実際にあった事件がリンクしていて、それが物語の1本の軸になってましたが、「よろずや~」では天保の改革という、やっぱり実際にあった出来事がうまいスパイスになっていて、それが連作の軸になってます。天保の改革といっても、中学・高校の日本史の教科書での「知識」としてしかみた事がなかったですが、こうやって小説の中に出てくるととても身近に感じられて興味深いですねー。
投稿者 shaw : 2005年07月16日 23:51
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