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2005年11月06日
-本[小説]-パイの物語 続き
先日ここで紹介した「パイの物語」、先ほど読了しました。
この小説、凄いです。傑作でした。いやぁ、もう感心しきり。未読なら一度読んどけ、と本気でいいたいです。
なにが、凄いか。
要因として思いつくところは、
1.サバイバル描写。
2.最後に語られるお話。
3.1、2を含めた全体的な構成。
まず、1について。
本書のメインともいえる、太平洋漂流記。インドからカナダへの移住の過程で、日本の貨物船「ツシマ丸」が沈没。沈没船に乗り合わせていた乗客のうち、主人公のパイ少年、足を骨折したシマウマ、オラウータン、ハイエナ、そしてベンガルトラが、全長がわずか8メートルの救助船に乗り合わせ。そしてそこからサバイバルがはじまる・・・。
もう、この設定だけでやばそうじゃないですか。当然動物たちは人間の言葉をしゃべられません。さらに、肉食のハイエナとトラという、きわめて危険な存在が、手を伸ばせば届きそうなところにいるわけです。死が目前の状況で、パイ少年はそこにある道具と状況判断と運で、なんとか生き延びようとするのですが。。
で、パイ少年、生き延びるためにはなんでもやってしまいます。かなり描写がリアルです。弱肉強食そのものなんですよね。本当にサバイバルしてしまいます。人によってはそこで引いちゃう人もいるかもしれませんが、このリアルさも当然作者の意図するものだったりするですよね。
そしてとどめのラスト。腹にね、響くんですよ。最大の敵、ベンガルトラのと邂逅はそういうことだったのか、と。下手なことをいってしまうと醍醐味を奪ってしまうので、これ以上は言いませんが。でも言いたい・・・。あ、そうそう、この本の最後にある解説はネタばれが含まれているんで、最初に読もうとしないほうがいいですね、念のため。
それでね、今このレビューを書きながら改めて思うんですが、全体の構成が本当に巧みなんですよね。本書は3章構成になっていて、それぞれ一口でまとめるなら
第1章:パイ少年の生い立ち
第2章:太平洋漂流記
第3章:生還、そしてその後
というふうになっているんですが、1章の内容がうまく2章に活かされていて、さらに2章までの内容がラストへの緻密な伏線になっている(しかも、それが伏線になっている、ということに最後まで気づかない)。ベンガルトラとの漂流記(という設定自体は、ブラジル小説からのインスパイアらしいんですがw)という設定以外にも、文中にはさまれるパイ少年へのインタビュー追記とか、沈没した日本船なんかも、実に効果的だったりするんだよなー。
とまぁ、私の文章ではこの本の面白さ、凄さがうまく伝えられそうにないんですが、読みどころ満載の良書(というか傑作)だと思います。かなりお薦めです~!
ちなみに、先日も書いたように映画化が決定してます。読んだ感じでは、シャマラン監督がいかにも好きそうな話に思うんですけどね。なんで降りたんだろう・・・。
以下、ちょっと話がそれますが。
私、「もっとも好きな映画は?」と聞かれると、間髪いれずに『スティング』です、と答えるんですが、「パイの物語」読了後、なんとなくこの『スティング』を思い起こしてしまいました。いや、全然話は似ていないんですけどね。
『スティング』という映画、ラストに大どんでん返しが待っているじゃないですか。初鑑賞時、完全にだまされている自分がいて、最後の最後で「ぐわぁ、そうことだったのか!」と、それはもう気持ちのいいくらいコロッとやられちゃうわけですよ。で、しばし呆然としたあと、話を思い返してみると、巧みに伏線が張られていたことに気づくんですね。その後、間髪いれず再鑑賞してみて、そこで脚本の素晴らしさに感服してしまう、という。「パイの物語」も、読了後そんな気持ちになりました。久々だなぁ、こういうの。さすがに再び読み返すにはボリュームがありすぎるので今はしませんが、いずれまたじっくり読み返してみようかと。
これだけ原作の出来がしっかりしていると、映画のほうは、よほど大きな失敗しない限り、少なくとも脚色賞という部門ではいいところまでいくんじゃないですかねー。
投稿者 shaw : 2005年11月06日 20:21
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