2003年12月06日

『ラスト・サムライ』

いよいよ正月映画のシーズンが始まって、今日は前評判の高い『ラスト・サムライ』と『ファインディング・ニモ』が公開です。

それにしても『ラスト・サムライ』、評判いいですね。先日スポーツ紙で「渡辺謙、アカデミー賞も」と大きくでてましたが、これはまんざらでもなさそうです。

私も二週間前に、先々行公開されていたので観てきました。なかなか感想がまとまらずに今日まで来てしまいましたが、以下簡単な感想です。

-- 追記 --

なんというんでしょうか、散々いわれてきたことですが、ハリウッド製作の映画で日本を扱うとたいていはキワモノ映画になるので、正直今回も期待していなかったという日本人がほどんどだったと思うんですよ。劇場の予告でも、初期のものはかなりあやしげな雰囲気を醸し出していたので。
ただ、ひょっとするといい線いっているのでは、と思わせるようになったのが最新バージョンの予告。これだけ予告の出来が段階を追ってよくなるというのも面白い感じでしたが。

先々月のプレミア誌の特集では、まだ半信半疑だったのですが、マスコミ試写を観てきた職場の編集長たちの話を聞くと、「なかなか良かった」と。そして思っていた以上に一般受けしそうだし、目頭が熱くなる親父さんが多そうだ、という話でした。

で、ここからは私個人の感想ですが、作品のできはかなり良く思いました。終盤かなりホロリときましたし、胸の奥底が熱くなるシーンもけっこうありました。歴史好きで、司馬遼太郎の幕末~明治時代の作品を愛読している関係上、細かいところでつっこみどころは満載なのも事実ですが、この映画はそういう面から斜に構えて観てみると損すると思います。大事なのはハリウッドの娯楽大作として割り切ってみることです。私は開始早々15分くらいでそういう見切りをつけて、後は作品を楽しむことができました。

誰もが思うことかもしれませんが、渡辺謙がすごくかっこいいです。トム・クルーズ主演作品って、えてしてトム・クルーズ映画になりがちですが、この映画に関してはトム・クルーズも主役は「侍」だということをしっかり心得ていて、日本人キャストの演出にかなり気をつかったんだと思いますね。その中でも渡辺謙の存在感はずば抜けていて、主演を食っているように思ったのは私だけじゃないと思います。
あと、劇中ではちょっと地味な真田広之ですが、エドワード・ズウィック監督談によると、真田広之の何千ものアドバイスは大いに役立ったとかで(これは『助太刀屋助六(』~『たそがれ清兵衛』と一連の時代劇出演の賜物かな?)、この話を聞いてこの映画がキワモノにならなかったのは、キャストとスタッフに多くの日本人を起用した点が大きかったようですね。

あとは、風景の描き方ですね。日本ぽくないという意見も多いようですが(実際、ロケのほとんどはオーストラリア。ニュージーランドだったかも?)、隠れ村の描き方は、当時の文明開化以前の日本文化を凝縮して見せようと努力しているが良くわかります。努力しすぎでかなりこっけいですが、それでもきれいなシーンが多かったです。成人男子が竹刀を振り回して訓練している場面とか、トム・クルーズと真田広之の立ち合いのシーンとか。

月並みなまとめですが、今の日本人にはもう残っていない、「武士道」について考えるいい素材だと思います。日本発ではなく、ハリウッド発なのがちょっと寂しいところではありますが。日本でもこれだけ規模の大きな作品が撮れたら、とは思うものの、ハリウッド級超大作を手がける人材は日本にはいないか・・・。


以下ネタばれ含むので、読む場合は注意を。

これまでいい面を強調してきましたが、やはり気になってたまらない点もちらほら。
例えば、勝元(渡辺謙)を幽閉から助け出すシーン。作品を娯楽として楽しませるのには必要なシーンなんでしょうけど、個人的にはいらないです。LOTRのレゴラスばりの弓術で銃相手にばっさばっさとやるなんて、いくらなんでもありえないでしょう。見せ場のひとつだってことはわかってはいるのですが。
あと大村(原田眞人)のキャラ設定。こういう悪人も劇中に必要なのはよくわかるんですが、ベースが大久保利通なわけですよね。なんだか誤解されちゃいそうな描き方だよなぁ、あれじゃ。
そして小雪がトム・クルーズに甲冑を着けるシーン。あそこはキスはいらなかったと思うのは私だけでしょうかねー。こういうところで、武士道を描ききれていないというか。これ、俺のほうが武士道というものを誤解しているのかなぁ。
で、極めつけは、集団戦闘のラストシーンでの集団土下座。他の気になる点は、まぁ仕方のないことかな、と思えますが、このシーンだけ理解できませんでした。ここで、私の心を熱くしていたものがかなり冷めたというのも事実だったり。

こうやってマイナス点をまとまてみると、実はこの映画を純粋な娯楽映画として楽しめていなかった自分を発見。なんだ、はじめのほうで述べていることと違うじゃないか!

こう考えると、大作としてなかなか楽しみながらも、肝心なところでのマイナスも目立つ、という感じですかね、個人的な批評としては。なまじ時代背景の予備知識があると、単純に楽しむというのはやはり難しいです。
けど、先々行公開で観たときは、客入りは多くありませんでしたが、ラストですすり泣きがかなり聞こえてきたので、一般層にヒットする要因は詰まっているのかな、と思いました。観て損はないと思いますね。ニモという強力なライバルもいますが。。

作品評価:★3 ※採点基準はこちら

>> このエントリーに含まれるTAG
>> 関連するエントリー
投稿者 shaw : 2003年12月06日 13:45

Trackback

このエントリーのトラックバックURL → http://www.s-hashi.net/x/mt-tb.cgi/174
Title: 【ラスト・サムライ】
Excerpt: 日本人も結構でています。 トムクルーズが侍って・・・ なんか違和感あるけど、現代の日本で和を 求めるのは外人のほうだろうと思う。 日本人もグローバル...
From: Watch IT!
Date: 2008.07.01

コメント

トラックバックから辿ってきました。映画の情報もかなり抱負なので、これから参考にさせていただきます。

さて「ラスト・サムライ」ですが、オープニングの今日、劇場に行ったのですがかなりの入りでした。
全般的に家族連れは「ニモ」or「あたしンち」、大人&カップルは「ラスト・サムライ」といった感じでした。
#それよりも試写会があった、「ゴジラ」が凄い入りでした。
#試写会なので当然ですが・・・。

僕も観たのが2週間前なのですが、驚くことにクレジットがはじまっても
誰一人席を立たなかったですね。結構長い映画なのに驚きでした(途中トイレは数人いらっしゃいましたが)。
それだけ作品の評価が高い表われではないかと思います。一部、異様な風景も
圧巻ですし、なんせ子役まで含めた日本人キャストの熱演がここまで観れる映画にしたのではと思います。

ラストの土下座で引いたというのに激しく同意(笑)。
まあ、主役だからしょうがないけど、ラストはトムだけが
いい思いをするっていうのかもどうかと思いますが、、いい映画といっていいでしょう。

Posted by: えんどー : 2003年12月06日 20:50

コメントする









名前、アドレスを登録しますか?