2005年02月28日

「花神」

先週いっぱい、「花神」という司馬遼太郎氏の小説をむさぼるように読んでました。これまで私が手に取ったことのなかった作品で、大村益次郎という明治維新の終わりのほう(第二次長州征伐~戊辰戦争)で活躍した人物のお話です。これがもう、面白いのなんのって。

私、大村益次郎という人のことはほとんど知らなくて、漫画「おーい、竜馬」でちょっとだけ登場する頭の大きな蘭学者(で、長州藩の軍師)という印象と、司馬先生の小説なんかで度々目にする「明治陸軍の創始者」というキーワードくらいでしか捉えたことのない方だったんですが、こうまで数奇な人生を歩んだ「偉人」だとは思いもしませんでした。

この話の一体どこにそこまで惹きつけられたのか、読み終わった後に振り返ってみると少し不思議だったりもします。
・あまり知らなかった人物に対する興味心。
・政治家・思想家ではなく、技術屋として偉業を達成した人物の、司馬先生の描き方が面白かった。
・江戸末期に来日した蘭医シーボルトの娘イネと大村益次郎の邂逅に惹かれた。
といった感じですかね。

長州藩という、明治維新を代表する藩で活躍した人物なのに、当時を代表する人物(坂本竜馬とか高杉晋作、薩摩藩の要人etc...)達との絡みがとても少ない、というのがとても新鮮でしたしね。

非常に読みやすいし、明治維新を普段とは違う側面から見ることができるお話だと思うので、この時代に興味がある方には強くお薦めします。

花神〈上〉
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5 だまされたと思って…
4 もう一つの幕末
5 地味ながら…
-- 追記 --

幕末に奔走して、後世に名を残した人物って、大抵は思想や政治的に大きな役割を果たしたからだと思いますが、そうではなく技術屋として大きな仕事をした人も当然いて、だけど技術屋でスポットを浴びるケースはそれほど多くないように思います。

で、大村益次郎という人の場合は典型的な技術屋で、百姓から医者で成功するために蘭学を志し、学者としてある程度成功を収めた後に地元長州藩(というより桂小五郎)から声がかかって、そこでなぜか長州藩の軍務家として大抜粋を受けて見事に才能を発揮したわけです。逆に、政治面では全然才能を持ち合わせていなかったようで、これが死因の一つともいえるのが歴史の難しさというか。

司馬先生も、この小説は「技術」という側面から幕末を描く、という試みをされていたようです。イネとの絡みの中で、当時の医学がどういうものだったかも触れられていて、なかなかに興味深かったです。

ちなみに、タイトルの「花神」というのは、中国でいう「花咲か爺さん」のことらしいです。それがどういう意味かは・・・。ぜひ本書を最後まで読んでみてくださいw
しかし、司馬先生の小説のタイトルは、「坂の上の雲」とか「翔ぶが如く」、「峠」等など、内容が全然連想できないものが多い・・・。

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投稿者 shaw : 2005年02月28日 00:45

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